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しかし入母屋造り
(屋根の上側は本をかぶせたような形だが、下側が前後左右四方向に傾斜がついている複合的な建築様式の屋根)
の見事な実家は、日本情緒を現代に伝える数少ない住まいとして度々、雑誌に取り上げられる。
だが、隙間風の吹き抜ける古い家屋は、真冬になると、暖房機器が効かないほど底冷えする。
しかも太陽の光を取り入れる構造ではないので、年中薄暗い。
両親はともかく、まだ年若い清香は知美の実家のような、お洒落なカントリー調建築の家に住むことに憧れた。
そして常日頃から両親にリフォームをねだった。
「そんなお金がどこにあるの?」
返ってくる答えはいつも同じであるが、
「お金がない」
の言葉は、俄に信じがたい。
清香は一人っ子で、小中高と公立だ。
大学も国公立を受験するつもりだし、受かる確率は高いと周囲に評価されている。
父は公務員で、年もまだ三十代中半と若いので、銀行から貸付を断られる理由などない筈なのに、両親は先祖代々受け継がれてきた自宅の、極端な改造をかたくなに拒むのだ。
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