lost chap 00 ― プロローグ

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   燃え盛る大地。広がる噴煙。暗闇を朱く照らす炎は世界を包み込む勢いで大地を席巻していた。見渡す限りの朱い絨毯は、生命を嘲笑うかのように激しさを増すばかり。  その光景を静かに一人、跪いたまま茫然自失と見詰める人影がイザヴェル平原の高台にあった。その美しくも凶凶しい翠色の双眸からは、炎に照らされ朱く輝く涙が滴り落ちている。 「こんなことが……あって溜まるか……」  ぎりりと、悔しさを噛み締めるように奥歯を摺り合わせ、その褐色の肌を持つ青年は足下の草を強く握り締めた。彼の長い黄金色の美髪は煤で汚れ、煌びやかだった服も所々に裂傷の痕が窺える。 「まだ生きていたのか、貴様」  身体の芯から凍えるような殺気と嘲笑うような侮蔑の言葉が、青年の背後から首筋に宛てられた刃と共にかけられた。  青年の死した瞳は凶刃を宛てる剣の主を見据えると、切れ長の瞳が復讐の黒翠色に燃える。そして口端(くちは)が僅かに吊り上がった。
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