lost chap 01 ― 出逢いの日

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   晴れ渡る太陽、澄み渡る青空。  グレゴリオ暦で春に相当するこの季節は皆の心が浮き足立つ季節でもある。ここ、シュヴァルツ大陸の丁度中央辺りに位置するゴルギアス王国の王都、セントラルもまた例外ではなかった。  今日は大都市に一つしかない魔法魔術学園――レグルスの入学式なのである。それを祝し、今日の街の風景は都市総出でのお祭り騒ぎへと変貌していた。  学園までへの道のりには各々銘々の屋台が犇(ひし)めき、活気ある市民が通りを歩く新入生に御祝いの言葉を投げかけている。  しかしそれでも語弊があった。なにも浮き足立つのはセントラルだけではない。ゴルギアス王国には王都セントラルを含め、五つの主要都市が存在する。その五大都市にはそれぞれ一つずつ魔法魔術学園が存在する為、正しくは王国総出でのお祭り騒ぎであった。  そんな最中、街の賑やかな風貌とはとても似つかわしくない表情を湛える少年が一人、苛立たし気に言葉を紡ぐ。 「……遅すぎる。あんのボケが」  彼は学園の唯一の出入り口である双関の扉に寄りかかり、憤懣やる方ないと言った表情で眼前を歩く新入生達を選定するように眺めていた。
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