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「いつき、ひよりっ!
悪ぃ、待たせたなっ!」
少年が走って向かった先では、幼なじみの二人が少年のことを待っていた。
「そんなに待ってないよ」
柔らかな笑みを浮かべて少年に応えたのは、白瀬陽頼。
「っていうかカイ、あんたまたなんかしたの?
先生の声、こっちのクラスまで響いてたよー」
そしてもう一人の少女、香坂樹は、呆れたかのように少年をみてため息をついた。
「いやぁ、今日は何も。
ただ、反省文…忘れててさー」
二人に出迎えられた少年、清城(すずしろ)カイはばつが悪そうな笑顔を浮かべる。
「もー、あんたのせいでこっちまで目立つんだからね、馬鹿カイ!」
樹が少し起こってカイに詰め寄り、陽頼がニコニコとしながらそれをなだめる。
カイ、樹、陽頼の三人組は、中学に上がる前からの親友で、この中学に上がってからもクラスは別々ながらも、いつも一緒に行動していた。
「それよりさ、せんせーにせっかくお許し貰ったんだ、さっさと行こうぜ!」
「もー…仕方ないな。
でも私もはやく行きたいかな」
「あはは、やっと今日から開始だしね、部活見学」
三者三様ながらも、三人は歩き始める。
今日から、この中学での体験入部を兼ねた部活見学が始まるのだ。
小さな小学校出身で大きな部活がなかった三人にとっては、沢山の部活があるこの部活見学は待ち遠しくてたまらないものだった。
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