小田原へ

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「それと帯刀(たてわき)」 突然名を呼ばれて驚いた顔をしたのは甲斐と同じくらいの年の頃の青年だった。 彼は甲斐の幼馴染で若き獅子、家老の壬生帯刀(みぶたてわき)である。 「はっ!」 「甲斐のことをよろしく頼んだぞ」 「はい!オレの命に代えてもお守りいたします」 そういって彼は深々と頭を下げた。 そして数日後の天正十八年二月十二日。 「では行って参る」 「どうかご無事で。ご武運をお祈りいたしております」 出陣の支度が整った忍城軍三百五十騎はついに小田原に向けて出発した。 月子と甲斐は遠ざかっていく男たちの背中を見送りながら、この城を守り抜くことを心に誓った。
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