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僕は階段の上から玄関の方へ耳をすませる。
内容までは分からないが母親と男の人が話している様子だった。
『冬威ー!夏綺ー!ちょっと降りて来なさい!!』
母に呼ばれて僕と冬威は玄関へ向かった。僕は必死に平常心を装っていたが内心ドキドキが止まらなかった。
玄関に着くとお隣のおじさんとおじさんの斜め後ろに申し訳なさそうに立っている1人の女の子がいた。
女の子は学校のクラスメイト達と雰囲気が違かった。なにか陰があるというか何というかまだ中学生の僕には言葉に表せない何かがあった。
冬威もきっと同じ事を思っただろう。
少しの間、沈黙が流れた。
『あ!君、今日から隣に住むんでしょ?俺は夏綺。夏に綺麗と書いて夏綺だよ。でも春生まれなんだよ!笑 よろしくね!』
気まずくなりそうな雰囲気に思わず僕は自己紹介していた。
冬威もつられて挨拶をした。
『ほら。梨菜ちゃんも挨拶なさい?』
おじさんがそっと斜め後ろにいた女の子を前に出す。
女の子は下を向いたまま小さな声で答えた。
『立花梨菜です。お願いします』
簡潔な挨拶。
これが僕と梨菜の出会いだった。
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