「ムニュ様の偉大なる野望の序章」

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(今日は……何曜日だっけ……? ……外にでも出てみるかな)  そう決めて、少女が茶色のスリッパをはいて外にでると、何かに脅えるかのように木々がざわめいていた。すると、少女を待っていたかのように、巨大な生物が現れた。 【竜骨(りゅうこつ)】  ティラノサウルスの骨だけくり貫いたような姿で、周囲の木の背を超え、この『死界』に光が差し込む程の巨躯。少女――家でさえ――など、すぐに踏みつぶすことが出来るだろう。  にも関わらず、少女に焦った様子は露ほどもなく、「眩しっ」と、久方ぶりの日光に幼い表情をしかめるだけだった。  ズシン、ズシンと死が迫る。  だが、突然【竜骨】が燃え上がった。そして、喉が無いため断末魔もなく、【竜骨】は消え去った。 「迎えに来たぞ」 【竜骨】が消え去った場所には、ひとりの青のカッターシャツを着た、黒のズボンを履き、茶色の髪で、鋭い眼光をした青年が立っていた。  彼は少女の元へゆくと、ガシガシと乱雑に頭を掻き、「また飯を食って無かったのかよ……」と少女を見つつ呟いた。少女はそれに反応を示さず、のんびりと一口、コーヒーを飲んだ。そして、今気がついたと言わんばかりに、青年に話し掛けた。青年は身長が高く、少女は低いため、彼女は必然的に見上げるような体制になる。 「ありゃ? ジンが来たってことは、もう月曜日だったり?」 「あぁ。準備は――出来てねぇんだろうな。どうせ」 「うん。てことでおぶって」 「火とか消したか? 水道流しっぱなしにしてねぇか?」 「……姑? ジンが見といて。ちょっと眠るから」 「ムニュ、お前がそんくらい――寝やがった」  いつものことなのでジンはブツクサ言いながらも、言われたとおりに確認し、速攻で眠りについた少女――ムニュをおぶって、その場から姿を消した。
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