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「あ、すいません。どうぞ」
そう言って振り向いた彼の顔には血が付いていた。
「あ…あの、顔に血が付いてますよ。」
「え? ああ、ちょび髭のか」
そう言いながら袖で顔をゴシゴシ擦っている銀髪の男。
ちょび髭が誰か気になるが、取り敢えず気にしない方向で自販機に小銭を入れる。
もうここから立ち去りたっかった。
ピッ
私がコーヒーのボタンを押すよりも早く響く電子音。
右側には野菜ジュースのボタンを押している指が見える。
あれ?おかしいな?私がお金入れたんだよね?え?何で野菜ジュースが出てるの?
そう思いながら隣りに立つ男を見る。
目が合う。
「…………………」
「…………………」
沈黙。
そして目の前に差し出される野菜ジュースの缶。
「お前顔色が悪いぞ。これ飲んで栄養取れ、特にビタミンだ!」
めっちゃ笑顔で言ってきた。
これでもかって言うぐらいの笑顔で言ってきた。
そして男は去っていった。
呆気に取られた私と、野菜ジュースを残して…
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