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―黒い影―
(チバ)
千葉るりは、喜びに 浸っていた。
自分に友達が出来たのだ。
引っ込み思案で暗いから、友達などいなかった。
そんな私に、友達が出来た。
待ち合わせの1時間前に来るほど
嬉しくて、楽しみで、早く会いたくて―
「お待たせ、るりっ!」
ベンチに座り浮かれている私に、
手を振りながら“彼女”がやってきた。
肩を露出したピンク色っぽい長袖に
黒のミニスカート。
そのスカートから伸びる、膝上まで黒のソックスで覆われたスラッとした足に、
黒の短いブーツ。
長い茶髪をなびかせる彼女―黒葉(クロハ)アリサは
「ごめんっ待たしちゃったね」
時間通りなのに謝った。
モデルのようなこの姿がちょっと羨ましい……
「それじゃあ、紅葉観に行こっ」
私の手を掴み、グイグイ引っ張る。
とても積極的……というより強引だろうか…
そう思っている私の耳から聞こえる、
不穏なサイレン―
『今日、午前7時頃、マンションの路地裏で、刺殺された男性の死体が発見されました。殺害されたのは、このマンションに住む、浅見隼(アサミハヤト)さん 20歳。
警察では、現場に奇妙なメッセージが残されており、先日の事件と同じ内容のことから、
連続殺人事件として
捜査を進めています。』
思わず振り返り、
ビルに設置されているテレビを見た。
この殺人鬼は、
今月の始めに現れて
既に3人の犠牲者が出ている。
その為、ニュースでけっこう騒いでいる。
しかも、その現場がどんどん近くなってきている。
「……怖いな…」
「平気だよっ」
私のつぶやきを
軽い返事で返し、
そのまま私の手を引っ張って、スタスタ歩いた。
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