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少年は夢を見た。
いや、見たのかもしれない。
そう思うのも、確かめる術がない。
そう思うくらい、不可思議な空間にいたのだ。
少年は黒い闇の中を漂っていた。
一寸先すら見えないと言うのに、自分の体ははっきりと目視できた。
ふと、手を伸ばしてみる。
なにも無い空間を――強いてあげるなら、そこにあった黒を――少年はつかんだ。
あぁ、本当に何もないんだな。
少年は何だか悲しくなった。
ここにあるのは闇と、闇と、闇と、闇と、自分。
何も無い空間ばかりが続くものだから、自分の存在意義が、価値観が冒されていくようで、なんだか気持ちが悪い。
少年はため息をついた。
ここに居続ければ、やがては自分もこの闇と成り得るのだろうか。
それはそれで、楽かもしれない。
そんな事を考える自分にあきれて、またため息をついた。
その時だった。
不意に何かをつかんだ。
否、何かにつかまれた。
見つけた。
彼の鼓膜は確かに揺れて、脳にそう伝えた。
見つかった。
そう思って少年は逃げるように目を閉じた。
怖かった。
得体の知れない何かがそこにあることが、ただひたすらに怖かったのだ。
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