第一章 夢の終わり~逃避~

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開け放たれた窓から小鳥のさえずりが聞こえる。 「んっ……ぁ?」 少年は目を覚ました。 あぁ、夢だったのか、とぼんやりと感じる。 (…夢?…って、なんの?) 思い出そうと記憶を巡らせるも、どうももやがかかる。 まぁ、それが夢だというものだろう。 彼、ニック・フォンドはそう思うとため息をついた。 「はぁー…。なんか目覚め悪いなぁ…。よし、もう一眠りしよう」 誰に言うわけでもなく呟くと、布団をかぶる。 眠気が押し寄せ、ニックは再び夢の中へと落ちていく。 「何普通に二度寝してるのよー!」 ――ドスッ! 「ごふぉ!」 腹部に強烈な衝撃を受けると同時に、眠気が吹き飛ぶ。 ベッドの上で腹部を押さえながらもがくニックは、涙目に声の主の姿をとらえる。 オリーブ色のローブをまとっていて、炎のように煌めく赤い髪の少女。 腰辺りまで伸びるポニーテールも特徴的だ。 彼女は分厚い辞書を片手にベッドの脇に仁王立ちしている。 「エナ…てめっ…朝から何しやがる…」 彼女はエナ・フォーラム。 ニックの幼なじみにあたる人物だ。 「ニックが二度寝するのが悪いの!ほら、しゃきっとする!」 無理矢理体を起こされたため目眩をおこす。 「…エナは朝からいつも大変そうだな、…ふわぁ~ぁぁ…眠…」 言いながらあくびがもれる。 あまりにも他人事な言い様にエナは目くじらをたてた。 「だ・れ・の・せ・い・よ!!」 辞書を鈍器のように降り下ろし、ニックの脳天に一撃。 ――ズンッ! 「ぁいっだぃ!?」 男とは思えない情けない声が飛び出た。 脳天を抑え、うずくまる。 「はぁ~…。お父さんにお目付け役を任されて一年…。いつになったら自分の事は自分で出来るようになるのよ…」 エナの父は彼らの通う学校の教師をしている。 成績も素行も悪いニックを見かねたのだろう。 幼なじみと言うことも相まってエナに依頼したのだ。 「おれだって自分の事ぐらい自分でできるっての…」 「はいはい。先に下降りて待ってるから、早く来なさいよ」 エナはニックの部屋を出るとパタパタと階段を降りていった。 さて、さっさと降りていかねばまたお小言を言われてしまう。 ニックは急いで身支度を始めた。image=435056451.jpg
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