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開け放たれた窓から小鳥のさえずりが聞こえる。
「んっ……ぁ?」
少年は目を覚ました。
あぁ、夢だったのか、とぼんやりと感じる。
(…夢?…って、なんの?)
思い出そうと記憶を巡らせるも、どうももやがかかる。
まぁ、それが夢だというものだろう。
彼、ニック・フォンドはそう思うとため息をついた。
「はぁー…。なんか目覚め悪いなぁ…。よし、もう一眠りしよう」
誰に言うわけでもなく呟くと、布団をかぶる。
眠気が押し寄せ、ニックは再び夢の中へと落ちていく。
「何普通に二度寝してるのよー!」
――ドスッ!
「ごふぉ!」
腹部に強烈な衝撃を受けると同時に、眠気が吹き飛ぶ。
ベッドの上で腹部を押さえながらもがくニックは、涙目に声の主の姿をとらえる。
オリーブ色のローブをまとっていて、炎のように煌めく赤い髪の少女。
腰辺りまで伸びるポニーテールも特徴的だ。
彼女は分厚い辞書を片手にベッドの脇に仁王立ちしている。
「エナ…てめっ…朝から何しやがる…」
彼女はエナ・フォーラム。
ニックの幼なじみにあたる人物だ。
「ニックが二度寝するのが悪いの!ほら、しゃきっとする!」
無理矢理体を起こされたため目眩をおこす。
「…エナは朝からいつも大変そうだな、…ふわぁ~ぁぁ…眠…」
言いながらあくびがもれる。
あまりにも他人事な言い様にエナは目くじらをたてた。
「だ・れ・の・せ・い・よ!!」
辞書を鈍器のように降り下ろし、ニックの脳天に一撃。
――ズンッ!
「ぁいっだぃ!?」
男とは思えない情けない声が飛び出た。
脳天を抑え、うずくまる。
「はぁ~…。お父さんにお目付け役を任されて一年…。いつになったら自分の事は自分で出来るようになるのよ…」
エナの父は彼らの通う学校の教師をしている。
成績も素行も悪いニックを見かねたのだろう。
幼なじみと言うことも相まってエナに依頼したのだ。
「おれだって自分の事ぐらい自分でできるっての…」
「はいはい。先に下降りて待ってるから、早く来なさいよ」
エナはニックの部屋を出るとパタパタと階段を降りていった。
さて、さっさと降りていかねばまたお小言を言われてしまう。
ニックは急いで身支度を始めた。
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