~2本の剣~

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~2本の剣~

6月8日、13時、件の館。 「こんにちは~、件いる~?」 私が大声で呼ぶと、2階の吹き抜けから件が顔を出した。 「こんにちは友香里さん…、あまり感心しませんね、図書館で大声を出すなんて。」 「ははは…、まぁまぁ、どうせ今日も誰も来てないんでしょう?」 「それはそうなんですが…、まぁ、いいでしょう。」 私は件をからかいながら、2階に上り、昨日見た本を探す。 しかし、本の量が多いためか、なかなか目的の本が見つからない。 「ねぇ件…、昨日私が読んでた本って、どれだったか覚えてる?」 「えぇ、“那覇市母子誘拐殺人事件”…、これですね。」 自分の図書館だから当たり前なんだろうけど、よく一発で見つけられたなぁ…。 「すごい記憶力だね…、羨ましいくらい。」 「まぁ、自分で並べましたから…、それに、それくらいしか取り柄も無いので。」 「もしかしてここにある本、何がどこにあるのか全部覚えてたりする?」 「まぁ、一通りは…。」 …この男、本当は凄い奴なんじゃないか? ここの本って多分、全部で10000冊は軽く上回ってるはず。 それを全部覚えてるなんて、並みの記憶力ではない。 「…尊敬します。」 「そんな大袈裟な…、私はむしろ貴女の方を尊敬しますがね。」 「私に尊敬されるような長所なんて無いと思うけど…。」 あるとすれば悪知恵が働く…、ってあぁ、悪知恵ってとこでもう長所じゃないな。 「昨日の推理は本当にお見事でしたよ、学校の成績もかなりいいのでは?」 「…聞かないで、泣けてくるから。 記憶力悪いから暗記系は苦手…、数学とかの応用系はそこそこいけるんだけど。」 「それはそれは、学生さんは大変ですね。」 「おじさん…、馬鹿にしてます?」 「お、おじさんですか…?いえ、馬鹿にしているわけではありませんよ。 ただ少し、面白いなと思いましてね。」 「…面白いって、何が?」 やっぱり馬鹿にしてると思い、思わず強く聞き返してしまう。 「私、推理力は皆無ですが、それに引き換え記憶力には自信がありまして。 そして貴女は私と逆で、推理力と応用力に秀でている…。 どうでしょう、少し面白いと思いませんか?」 了
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