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僕は処刑台に立った。雨だと言うのに人々は傘を持参してまでこのショウを見ようと駆けつけた。メタファーが僕の思考を遮りつつあった。
ここにいるだれもが罪人であることを僕は知っていた。僕は雨に凍える少年を拷問し列車を待つ老人を突き飛ばして恋人を殺したが、彼らは今ここで僕という人間を正義の名の下において殺すのだ。
雨が降り続いた。そして僕はこの雨がいつまでも降ることを望み、僕が命を失うそのときをじっと待った。何かをすれば許してくれるのなら、僕はその何かを全力をもって行うだろうが、たぶんそれはできないのだ。
僕は、雨の降る間隔に合わせて、鼻歌を歌った。
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