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「おとなしくしろよ」と言う男の声が聞こえる。
「おとなしくしてたら怖いことなんて何も無いからよ。ヒヒ、楽しいことしようぜ」
「いや、いや! やだ! なんなの? 何が起きて……亮介君! 助けて!」
「おい、お前、押さえつけてろよ!」
「暴れんなよオラ!」
きっと、夕子は何も知らずに、戻りづらくなってその辺をうろうろしていたのだろう。
きっと、挨拶でもしながらのん気に近づいたのではないだろうか。
夕子が、あっさりと捕らえられてしまったのは容易に想像できた。
……
現実の世界の僕らがどうなっているのか知る由も無い。
まさか、この世界でされたことと同じように、現実世界の身体もリンクして傷ついたりするのだろうか。
わからない。
ただ、この世界で迎える死が、この世界の僕らの消滅を物語っていた。
夕子は僕が隠れている茂みのすぐそばで、一晩と言う時間をかけて乱暴され、そして死んだ。
僕は彼女がどんなに叫んでいても、自分の安全のことばかりを考えてしまって、外に出ることが出来なかった。
亮介君、助けて、と言う夕子の声が何度も聞こえた。
残念だけど、亮介君は助けに来ませーん、誰も助けに来ませーん、と言うおどけた声がそれに答えていた。
それを聞いた僕は、怒りや悲しみよりも、ただただ怖くて仕方が無かった。
夕子がどれだけ泣き叫んでも、許しを乞うても、男達は容赦しない。
僕の中には恐怖だけしかなかった。
自分の身の安全だけをずっと考えて、体を震わせながら、ただ祈るばかりだったのだ。
どうか自分が見つからないようにと。
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