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じっとしているわけにはいかない。
離れてしまった美野里と亮介、それに残してきたあかねのことが気がかりで仕方が無かった。
そうだ、と僕は思う。
美野里も亮介も、あかねのことが気がかりになるだろう。
待機組みにこのことを知らせなければいけない。
待機組みは女性やひ弱な男達ばかりで、不意打ちされたらとても耐え切れるようには思えない。
僕はそう結論付けると歩き出した。
奴らと出くわさないように、警戒しながら道を進まなくてはならなかったが、とにかく。
木になっている果物をかじって飢えをしのぎながらも、時間をかけて前に進んだ。
今を思えば、それが間違っていたのかもしれない。
どう考えても、奴らよりも先にスタート地点に戻らなければいけなかったのに。
急ぐべきだったのかもしれない。
ただ、それでも結局のところ、僕は自分のことを考えていた。
見つかりたくなかったのだ。
結局、気配を消しながら慎重に、時間をかけて進んでしまった。
……結論から言うと、僕がスタート地点にたどり着くのにはすごく時間がかかった。
太陽と時間で方角を見ていたが、それでも歩く足は連中の影にずっと怯えていたし、僕には体力というものがあまり無いのだということも実感させられてしまった。
休憩時間に多くの時間をとられ、帰るのに七日もかかってしまったのである。
そんな日の昼下がり。
果物を静かに食べていた僕の耳に、かすかなうめき声が聞こえた。
風の音とは確かに違うその音を頼りに歩き回った。
探し出すのに数十分。
僕が急ぐべきだったと考えたのはこの時だった。
うめき声を上げていたのは、あかねだったのだ。
あかねは、胸を刺されていた。
まともな衣服さえ身に着けていなかった胸部から、痛々しい傷跡が残っている。
もはや瀕死。
「どうして助けに来てくれなかったの?」と、あかねは僕を見て弱々しく言う。
「怖い人たちが来て、すごくひどいことをされて、助けてって叫んだのに誰も助けてくれなかった。亮介君って、何度も呼んだのに。何度も」
僕は何かを言おうとして、何も言えなかった。
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