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「嫌い。みんな大嫌い。嫌い……」
あかねの体から力が消えていく。
「ダメだよ。死なないで」
僕は彼女の手を握った。
だが、そうして握りしめていたあかねの手から、体温がどんどんと消えていくのがわかる。
そして、あかねは息をしなくなった。
死んだのだ。
私はその場に膝を着いた。
あれだけ嫌っていた二人が死んでしまって、どうしてこんなに悲しいのだろう。
亮介、どこにいる?
君のことが好きだった女の子はみんな死んでしまった。
僕は声をあげて泣いた。
溢れ出る悲しみ。
そして、怒りが生まれた。
冷たい憎悪だった。
それが生まれた直後から、僕の中にはもはや憎しみ以外のものは消えて無くなった。
女性を捕らえて自由を奪い蹂躙する、あの男達を軽蔑していた。
僕は武器を探す。
だが、武器になりそうなものなど、地面に転がっていた二十センチほどの尖った枝だけだった。
こんなもので何が出来よう。
僕は憎しみに心を犯されながらも、途方にくれていた。
どうしようもないほどに熱い感情で、胸が苦しくなった。
自分は無力だ。
平気で人を殺すようになった彼らに対抗できるものが、何一つとしてないのだ。
僕はじっと何かを待つように手のひらを見つめていた。
そして、スタート地点に近い場所、なおかつ手負いのあかねを刺した狩人がいるかもしれないそこで、じっとしているのがいかに危険なことだったのか、気づかずにいた。
僕が気がついたときには、男の持つ槍のように尖った枝の先が、僕の首筋に触れていた。
「お前かよ」
と、その男は言った。
探索チームの、佐藤を刺した、あの声だった。
「僕を、殺すのか」と、僕は言った。
もちろん、そんなことは無いのだろうと、すぐに思いだした。
「殺すかよ、もったいねー。大人しくしてればだけどな」
と、その男は言うと、気持ちの悪い声を発しながら僕の身体に触れてきた。
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