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亮介、夕子、あかね、美野里。
彼女たちを探し出す努力は、特に必要無かった。
ゲーム開始地点と言うのは、どのプレイヤーもそんなに変わらない場所からスタートするらしい。
周囲を見渡すと、他のプレイヤーにまぎれて、彼女達は現実世界とほぼ変わらない姿でそこにいた。
「信じられない」と、亮介が言う。
彼は、合流してから丘を降りて森を歩いている途中、木になっていた果物を口に運んでいたのだ。
果汁で濡れた唇を動かして、目を丸くしていた。
僕も口にしたそれは、味も食感も、現実の果物そのものだった。
むしろ美味しいと顔をほころばせてしまうほどの素晴らしい味だった。
のどを通り、胃に落ちていく感覚までもが現実世界と変わらない。
それよりも、喉の渇きや、お腹が減るという食欲の感覚までもがあることに、僕は驚いていた。
息を止めると苦しいし、頬をつねると痛い。
科学の進歩はすごいと、僕は感心したものだった。
だが、数時間して、僕らは異変に気づく。
いや、僕らだけでなく、他のプレイヤー達もそうだ。
事前に聞かされていた説明では、数時間後にテストプレイ終了のアナウンスが流れ、そしてゲームが終了するはずだった。
僕は、アナウンスが始まれば、きっとこの仮想世界にやってきたときと同じように、意識だけが光も追いつかないスピードで現実世界へ移動し、そうして覚醒するのだろうと、勝手にそう思っていた。
全身に機械を着けられ、椅子に座ったままの、あの姿で目を覚ますのだろうと。
だが、アナウンスはいつまでたっても流れない。
流れないまま、太陽は僕らの知っている世界と変わらない速度でゆっくりと沈み、夜がやってきた。
輝く月の下、眠気までもが再現されたゲーム世界で、僕らは地面に丸まって眠った。
アナウンスは流れない。
次の日も、その次の日もそうだった。
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