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毎日、有志の募集ではあったが、探索はなるべく男が勤めた。
説明会の内容を思い出せば、ゲームでよくいる凶悪なモンスターやコンピューターが操作するNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が用意されているとは思えないが、危険があったときの用心のためだ。
他は食料を集めてくる係り。料理する係り。
僕はもちろん探索に参加したが、やはり何も見つけられず時間だけが過ぎていってしまった。
「まったく何も見つからないでやんの」
と、亮介がおどけた調子で小言を漏らした。
「毎日退屈で仕方がないよ。まぁ、俺はお前らが一緒にいるから良いけどさ」
あかねも夕子も、それに対してうれしそうに笑う。
美野里と私は小さくうなずきながら、それを見ていた。
そんなことがあった数日後。
会議で周辺は調べつくしたと判断が下された。
そうなのだろう。
あれからもう、一ヶ月もたったのだ。
周辺は調べつくしたはずだ。最早どうすることも出来ない。
不安を抱えたこのままで、アナウンスを待ち続けなければいけないのだろうか。
「今のままで待っているばかりでは、帰れるかわからない。何でも良い。出来ることをしよう」
と、誰かが言った。「もっと遠くへ探索にでたらどうだ」と。
それに対しての反論はなかった。
遠方。
この世界がどこまで続いているのか。
丘から見る限りでは、森がどこまでも広がっていて、地平線の彼方まで緑一色だった。
それでも、帰りたいと誰もが賛成し、結局探索チームが結成されることになった。
今を思えば、希望のない話である。
探す当てがない。
遠方なら、どこかに現実世界に帰るためのキーアイテムやらドアなんかが「多分」見つかると言う、そんな夢みたいな話だったのだから。
もちろん、それに根拠なんて無い。
それでもチーム参加の有志は全体の半分程になった。
「俺も行くべきだと思う」
と、亮介が口を開く。
「何もしていないよりも何かしてた方が気が楽だし、それに本当に何か見つかれば、帰れるかもしれないし」
夕子がそれに「賛成!」と言いながら笑顔で亮介の腕に飛びつく。
「でも、危なくない? 何かあったら嫌だよ。この場所にいようよ。遠くまで行って、この場所に帰れなくなったら」
反対意見を言い出したのはあかねだ。
僕としても、やたらめったらに歩き回らずに、じっとしていた方が良いと思ったが、僕とあかね以外のメンバーはそうではないらしい。
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