Desire

7/20

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
毎日、有志の募集ではあったが、探索はなるべく男が勤めた。 説明会の内容を思い出せば、ゲームでよくいる凶悪なモンスターやコンピューターが操作するNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が用意されているとは思えないが、危険があったときの用心のためだ。 他は食料を集めてくる係り。料理する係り。 僕はもちろん探索に参加したが、やはり何も見つけられず時間だけが過ぎていってしまった。 「まったく何も見つからないでやんの」 と、亮介がおどけた調子で小言を漏らした。 「毎日退屈で仕方がないよ。まぁ、俺はお前らが一緒にいるから良いけどさ」 あかねも夕子も、それに対してうれしそうに笑う。 美野里と私は小さくうなずきながら、それを見ていた。 そんなことがあった数日後。 会議で周辺は調べつくしたと判断が下された。 そうなのだろう。 あれからもう、一ヶ月もたったのだ。 周辺は調べつくしたはずだ。最早どうすることも出来ない。 不安を抱えたこのままで、アナウンスを待ち続けなければいけないのだろうか。 「今のままで待っているばかりでは、帰れるかわからない。何でも良い。出来ることをしよう」 と、誰かが言った。「もっと遠くへ探索にでたらどうだ」と。 それに対しての反論はなかった。 遠方。 この世界がどこまで続いているのか。 丘から見る限りでは、森がどこまでも広がっていて、地平線の彼方まで緑一色だった。 それでも、帰りたいと誰もが賛成し、結局探索チームが結成されることになった。 今を思えば、希望のない話である。 探す当てがない。 遠方なら、どこかに現実世界に帰るためのキーアイテムやらドアなんかが「多分」見つかると言う、そんな夢みたいな話だったのだから。 もちろん、それに根拠なんて無い。 それでもチーム参加の有志は全体の半分程になった。 「俺も行くべきだと思う」 と、亮介が口を開く。 「何もしていないよりも何かしてた方が気が楽だし、それに本当に何か見つかれば、帰れるかもしれないし」 夕子がそれに「賛成!」と言いながら笑顔で亮介の腕に飛びつく。 「でも、危なくない? 何かあったら嫌だよ。この場所にいようよ。遠くまで行って、この場所に帰れなくなったら」 反対意見を言い出したのはあかねだ。 僕としても、やたらめったらに歩き回らずに、じっとしていた方が良いと思ったが、僕とあかね以外のメンバーはそうではないらしい。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加