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だが、そんな時、美野里が口を開いた。
「私は賛成」
美野里は普段からあまりしゃべらない。
ただ、やさしく笑ったり、人の話を聞いて、決して主観的の混じらない、的確なアドバイスをくれる。
僕は美野里のそう言うところを高く評価していたし、美野里に対しては好感を持っていた。
そして、美野里はこういう話し合いの場では特に口を開かない。
いつもは僕達メンバーの話を聞いて、なにやら考えている。
ただ、ここぞとばかりに口から出る意見には、どうも逆らえない雰囲気がある。
命令とは違う、何か力のようなものを感じるのだ。
ただ、この時ばかりは流石にあかねは不安だらけだったようで反対の意見を曲げなかった。
僕はあかねのこういうところもあまり好きではない。
「帰れなくなったら? もし、アナウンスが流れた時に、この近くにいなかったから帰れなかったとか、そう言うことになったらどうするの?
私はイヤ。
絶対ここから離れたくない」
僕はそれに対して言う。
「悪いけど、僕も探索に賛成だよ。そんなに言うならあかねがここに残ってみんなを待っててくれればいいじゃないか」
決してイラついた気持ちを面に出すことなく、淡々と。
だが、あかねが「でも……」と言いかけたところで、亮介が不機嫌さを隠すことなく言った。
「だったらいつまでもここにいろよ。こんなところにいたって何も変わらないんだよ。状況を変える努力をしろよ、バカ」
最低な男だ。
少しも優しくない。
夕子もあかねも、恐らくは亮介のことが好きなんだと思う。
亮介はそれに気づいてないのか、気にしてない様子だが、ともかく。
あかねは涙をボロボロと流しながら、歩いて行ってしまった。
夕子がオロオロとしながら亮介の顔を見ている。
(期待しても、亮介は追いかけたりはしないだろ)
と、僕は二人を見て思った。
事実、美野里だけがあかねを追いかけていった。
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