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彼と最初に迎えたクリスマスにあげたクリスマスプレゼントは、『毛糸の靴下』を三足。
寒い寒いこの時期には、彼はいつもはいてくれた。
その靴下は私の手作りで、編み物が得意な私が作ったそれは我ながら、市販出来る物の域に達する。
そのため、きっと別れたあともはいてくれるだろう……。
「別れた後もだと!?お前はたく……縁起がないこというなよな。普通そんなこと考えるかよ。」
彼は私が言った言葉にそう返した。
彼の言うことも一理あるし、彼の言う通りが普通なのもわかっている。
だけどね、彼がすきなぶん、彼との時間が幸せなぶん、私は別れかたを連想してしまう。
傷付かないように。
たぶんそれ以上でもそれ以下でもないだろうその意図は、私にとってはもっとも重要だった。
もし、別れたとき。
彼に未練がのこっていてくれたら、あげた靴下も残しやすいように。
恋人としてじゃなくても、あったときにもっている可能性が少しでも多くなるように。
ただ、そんな悲観的で弱気な思考から、私は靴下を編んで送った。
イニシャルなんていれなかったし、可愛らしいハートも入れなかった。
成人男性が売ってたら普通に買っても変じゃないデザイン。
だから、私がいつか元カノになろうとも、それだけはとっといてくれるかもしれない。
あの人には、イニシャル入りの、お揃いの色違いのマフラーを作った。
だけど、町のどこかで見かけたとき、彼はしていなかった。
私と付き合っていた時は、寒い日はいつもしてくれたのに。
きっと処分したのだろう。
それは当然であり、私もそうだとは覚悟していた。
けれど、悲しかったのは事実。
。
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