雪の妖精

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とある時代。 とある場所。 白のニット帽に青の手袋、緑色のセーターを着た男の子が歩道を目を輝かせながら走っている。 その後ろからその姿を見て微笑みながら親らしい男性と女性が歩いて追いかける。 道の左右で開かれている店では、色とりどりのイルミネーションが飾られ、様々な場所に赤と白の服装をした白い髭を生やしたお爺さん――サンタが置かれている。 そのショーウインドーの前には女の子が大きなクマのぬいぐるみを見つめている。横にいる女性が何かを言い、女の子は跳びはねる。 そして、店の中へ入っていき、しばらくすると、大きな紙包みを一生懸命持っている女の子と女性が出てきて、道を歩いていく。 それを、とある一人の女の子が見ていた。 その女の子は、大きな大きなクリスマスツリーの天辺に腰掛けていた。 「…いいなぁ。」 女の子がぼやく。 「私はただただ雪を降らせるだけ。私からあげるものはあっても、誰も私にはくれない…」 「世間で信じられてるサンタでさえ私には何もくれない…」 「私はただ雪を降らせるだけの存在…ただ、それだけの…はぁ」 女の子――雪の妖精はため息をつく。 白い煙があがる。
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