プロローグ

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 事故から2年後の9月17日、平日。現在。文化祭を一月後に控えた高校2年生の朝は、残暑で照りつける太陽に文句を言いたい。  全く、9月になってもう17日を過ぎたというのに、鬱陶しいこの暑さでは秋なんて季節は訪れはしないのかと心配したくなる。  などと、そんな訳があるハズない杞憂を浮かべながら、汗だくな制服の襟をパタパタさせて坂道を登った。坂道を登るだけでこれなのだから、早く過ごしやすい気温に落ち着いて欲しいものだ。  そう季節に対して切なる願いを思いつつ2年前の事故現場へと着いた。信号や横断歩道も無く、軽自動車2台が横に並んでスレスレにすれ違える幅しかない、7方向へと道が別れている分岐点の路地。  朝という事もあり通行人は殆どいなかった。とはいえ早朝だという事でもないのだが、8時半前という時間では会社へ赴く人は既に出社済みで、制服を着て登校する生徒はまだ時間を潰しても大丈夫な時間帯だからだろうか。  人が居なくなってしまう隙間みたいな時間帯。住宅街は人の住まいの集合体である場所なのに、この静けさというのは寂しいものを感じてしまうな。  まぁもう少し時間が経てば、ここも登校する生徒が人通りを作るだろう。自分もその1人なのだし、変な気持ちに流されて時間を食い潰すのだけは止めなければ。  自転車通学をしなければならない程遠かった中学校とは違い、通っている高校はここから歩いても15分少々も掛からない。朝学活開始時刻が9時20分だから全然余裕ではある。  とはいえ、あんまり時間を掛け過ぎれば遅刻をしかねない。朝の貴重な時間を無駄にするべきではないのだ。
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