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土俵に立つ私の前に私の分身。その人は今の私と全く同じ格好をしている。
見れば見るほど滑稽なその姿を自分もしていると思うと、それだけで深いため息が吐けた。
「でも、賞品のために頑張るんだから」
賞品は“あなたの望むもの”。
私の望むものは“魔之王との親密な関係”。注がれる愛。私は必ずそれを手に入れるの。
試合が始まり、会場が沸き立つ。
敵六条はファイアを繰り出した。が、それは私まで届かずに消えてしまう。
「やっぱりダメかー」
敵六条は嘆きながらもファイアを出し続ける。そうして少しもたたないうちに、ガス欠になったかのように間抜けな音を出しながら炎は消えた。
「ダルミャル、魔法を出すにはどうしたらいいの?」
あまりの分身の不甲斐なさに泣けてくる気持ちをおさえ私はきいた。
「呪文は、ファイア・フェアリー・ファイヤー」
鳩胸の毛むくじゃらを主張し、かっこつけて言うが、全然だめだ。
「なにそれダルミャル。カッコ悪い」
とは言え、目の前の敵六条を倒さないわけにはいかない。
仕方なく、小さな声で唱え始める。
「ファイア・フェア――」
「降参です!!」
敵六条はギブアップをした。ほんとに情けない……
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