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それから一週間、赤い月の世界で魔之王とともに過ごした。
会話が弾まなかったり、笑いかけてもらえなかったり、手を握り返してもらえなかったり、いいことだけではなかったけれど、魔之王といられることが幸せだった。
もちろんダルミャルも近くにはいたが4日目を過ぎた頃から押し入れにこもってなにも言わなくなっていた。
赤い月明かりそそぐ部屋にインターホンの音が響く。ドアを開けるとそこにはラエルが立っていた。
「魔之王にアイタイ。アワセテ」
彼女は毎日やって来る。けれど、会わせるはずもない。
「魔之王さんはあなたに会いたくないって」
毎日来ているのに、魔之王は一度も出てこない。
それが答え、毎日言い聞かせている。正義なんて振りかざしていたら、本当にほしいものなんて一生手に入らないのだから。
「ニプレス!!」
部屋の奥から魔之王の声。見せたことのない優しい笑顔。優しい声色。
「ダメ! 魔之王さんは中に戻って!」
「でも、六条……」
「ダメったらダメなの!」
「でも六条! 俺が好きなのは君じゃないんだ。彼女なんだ!」
魔之王は六条を押しよけるとラエルの腰に腕をまわす。
「あなたは、私の恋人でしょう」
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