6人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなのされたことない。
嬉しそうなラエルの表情が苛立たせた。
「上っ面だけだったんだよ。俺が好きなのはニプレス……ラエルだ」
好きも抱き締めてもらうことも、されたことがないのに。
「嘘だよ。嘘だよね、ダルミャル」
いつの間にか押し入れから出てきていたダルミャルが頭のヤシの木を撫でながら言う。
「人の気持ちまでは変えられなかったってことだねぇ。それしかないと思うよ」
「……なんで私じゃないの。ラエルは少しスタイルがいいだけじゃない。魔之王さんだって、ラエルの胸ばかりみていたじゃない。ただ、体に釘付けになっていただけじゃない。私の方が、魔之王さんを幸せにできるよ!」
一息ついた私を、魔之王とラエルが蔑んだような目で見下ろす。
「寂しい子だね」
「うるさい! こんな世界、全部全部燃えてなくなればいいんだっ」
炎の呪文を唱えると再び小人たち。周りのものに火をつけてまわりあっという間に火の海が出来上がる。
「早く逃げよう、ラエル」
魔之王が炎の向こうで玄関を開けようとする音が聞こえた。すると、小人がドアノブを熱して熱くする。
「逃がさないんだから……」
「魔之王、手が……」
最初のコメントを投稿しよう!