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「…だよね?」
「…。」
「理紗?聞いてる?」
「…あ。ごめん。ごめん。何だっけ?」
頭の中が君でいっぱいで、レナの言葉が入ってこなかった。
「もう。また正君の事考えていたんでしょ?当たり?」
「当たり」
「やっぱり。どうなの?上手くいってるの?」
「表向きは。」
「何それ?」
レナがごちゃごちゃ何か言っていたけど、私はただ窓の外を見ているだけだった。
空は黒くなってきて、雨がポツリポツリと降ってくる。
みな、無造作に傘を広げて急ぎ足で歩いていく。
「さっきはごめんね。ぼーっとしてて。」
傘を広げながらレナに謝った。
「いいよ。いつもの事じゃん。」
レナは全く気にもとめていない感じだった。
駅の近くまで来た所で、時刻を確認しようと、携帯を広げた。
でも、その前にレナが腕時計を見て、
「21:00だよ。」と教えてくれた。
辺りは一面に傘の花が咲いている。
「もうそろそろじゃない?」「そうだね。」
21:00。君の残業が終わる頃だ。
「連絡してみれば?」
「うん。」
レナの言葉にまた携帯を広げる。
私が番号を押そうとすると、レナは手を振って、改札の方に消えていった。
レナが気が利く。とても自然に気を利かす。
何度か呼び出し音が鳴ってから、君は出た。
「終わったよ。迎えに行くから、駅の外で待ってて。東口。」
よく通る声で、すらすらと言って、すぐに君は携帯を切った。
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