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突然大笑いをした美琴に周囲から視線が飛ぶ。それでも彼女の笑いは止まらなかった
ひとしきり笑った後美琴は、頭上に『????』と疑問符を浮かべてまだ悩んでいる正明に背を向けて歩きだす
追いかけようとした時、五メートル程離れ後ろ手に鞄を持った美琴がスピンするように振り返り
「人が良過ぎんのよ、バーカ」
満面の笑みを浮かべて言った
バレンタインデーの結末には色んな形がある
受け入れられるのも、拒否されるのも、保留とされるのもその結果だろう
けど、きっと自分達はこれでいいと美琴は思った。喩えバレンタインチョコの意味を彼が気付かないとしても、それも一つの形だから美琴はこの状態にも不満はなかった
何を思って美琴が笑ったのかまだ分からず首を傾げたままの正明が、それでも一緒に歩いてくれるだけで美琴の心は満足感に満たされた
(あぁ。そっか……)
さっきよりも素直に自分の心と向きあい、答えを否定せず今の心境に納得する
いつからかは分からない。けどきっと、いつの間にか私はこの男を好きになってしまっていたのだ、と
首だけでチラッと後ろを振り返る。追ってくる正明は、もうすぐそこにまで近づいていた
歩いてくれる彼に今の顔を見られるのが恥ずかしくて
「―――フフッ」
隠すようにして美琴は頬を緩ませた
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