二人の形

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日付は2月14日――― 世界がバレンタインという一大イベントを賑わう中で、チョコの陳列した棚を前にして御坂美琴は迷っていた デパートの一部とはいえ、バレンタインという企画のために作られた場所はコンビニより少し広めという程度の広さではあるものの、商品の品ぞろえは多種多様でかなり良い方だ 学校帰りの時間帯だというのに、フロアは楽しげな女子の声で賑わっていた バレンタインは今日一日を指しているので間違えていないが、同じ学校の相手に渡すのならその決心は遅いのではないかと美琴は思う しかし他人が一歩踏み出すかどうかなど、今の美琴には興味がなく、自分の目の前にある棚に意識を戻す 298円のホワイトチョコが手頃かと思いながら手に下げている学校指定の鞄をチラチラと見てしまっていた。正しくは、鞄の中に押し込められている小さな紙袋を 「……どうしよう。やっぱ、美味しいほうがアイツも喜ぶ……よね」 と呟き美琴はチョコの袋を一つ取り 「でも……」 ……戻す 取って、戻して、取って、戻して。何度もそんな事を繰り返している、不審者にしか見えない少女の姿は、この日だけは奇異の視線にさらされる事はなかった 明日はバレンタインデー 少女が内に秘めた想いを告白する、絶好の世界的イベント 勇気を出して気持ちを伝えるべきか、断られる事を恐れて何時も通りの一日を過すべきか 恋する乙女にとっては重大な選択を迫られる日である ―――学園都市が誇る超能力者(レベル5)の第三位 『超電磁砲(レールガン)』との異名を持つ御坂美琴もその一人だった チョコの集約した特設コーナーの天井には『甘いチョコで意中の相手と甘い仲に!』と書かれた横幕が掛かっている (うまくねーっつの……)
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