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この男はどこまで頭がお花畑なのだとたまらず美琴はもう一度溜息を吐いた。何だろう、色々考えすぎて緊張していたのが馬鹿らしくなる
見上げてみると、彼はキョトンとした顔をしたまま美琴を見ていた
正明からしてみれば眼前にいる少女の悩みは全く判らない
そうでなくても超がつくほどに鈍感で天然なのだ。今立っている場所が何を特集している場所だと判っていても美琴がどうして悩んでいたのか、なんて事を正明は想像すらしていなかった
視線を泳がせると『バレンタインデー』とロゴの入った垂れ幕が目に入る
「あ。そうだ美琴」
「あん?」
正明はの持っていた学生鞄の中を漁り
「――――ハッピーバレンタイン、美琴」
「………へ?」
唐突に差し出された、カラフルな包装紙に美琴は呆気にとられてしまう。正明の言うとおりだとしたら、掌くらいの大きさをした袋の中身はチョコという事になる
だけど、だとしたら尚更理解できない
初対面の人間なら間違いなく落とせるであろう顔で笑う人間の性別は男である
バレンタインというのは女が男にチョコを
もっと言えば、好意を伝えるに絶好の後押しをしてくれるイベントだ。男から女に、なんて普通じゃないし、もしそうだとしたらもっと困る
不意に美琴の視線は自分の手にある鞄に向いた。中には正明の渡してきた袋と同じ大きさのモノが入っている。不出来ではあるが、出来た中では良い出来をしたチョコレートだ
菓子作りは別に苦手ではないが、色々と考えて作っていたら運悪く炭になってしまったりした
ルームメイトの白井黒子からも『心ここにあらず、ですわ』と言われてしまったくらいだから余程重度に思い悩んでいたのだろう
そんな状態でも奇跡的に出来たいくつかのチョコは今、美琴の鞄の中に入っている。学生寮から出るまでは色々世話にもなってたしプレゼントでもしないとね、と自分でも分からないくらい結構乗り気だった
少なくとも学園に登校する前までは
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