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御坂美琴はレベル5の超能力者である
実力はさることながらその気さくな性格は男子禁制の女学院では頼りになる存在として名を馳せていた
黒子のように好意を寄せる者もおり、バレンタインという絶好の機会は彼女たちにも効果覿面だった
鞄を持つ美琴の手とは逆の手には、そんな『女子たち』から貰ったチョコが入っている
学校にいる間に美琴は、その一つを開けてみてかなりショックを受けた
他の子はどんなものを作ってるんだろう?という興味本位から開けてみたのだが、中に入っていたチョコは想像以上にレベルの高い出来をしていたのだ
炭の中から奇跡的に上手く出来た自分のチョコと比べると、適当なものでも渡せばいいと軽い気持ちでいた美琴の胸中に何だか良く分からないモヤモヤとした感情が浮かんできていた
その気持ちが何なのか良く分からないまま彷徨い歩く様に街に繰り出し、言い寄ってきた男たちをあしらい、ふと視界に入ったキャッチコピーに惹かれて店の中まで入ってきてしまい現在に至る
…………上手くないと馬鹿にしていた美琴だが、結局自分自身もその上手くもない言葉に誘われた一人だったのだ
美琴は渡された包装紙を受け取り、決心する
バレンタインデーに男から先にチョコレートを送られ、渡そうと思っていた相手に自分の心の内を気付かされるなんて、我ながら情けない
脱力する美琴を正明はただ眺めていた
今日の彼女は何だか変だ。いつものように突っかかってくる事もなく思い悩んでいると思ったら、今はそれが嘘のように晴れやかに苦笑している
首を傾げていると、美琴は手に持っていた自分の鞄を開けて中から正明の渡した袋と同じ大きさのファンシーな模様の入った袋を取り出し、正明に向けて差し出した
唐突な彼女の行為の意味を察せず、正明は驚き頭を掻きながら尋ねた
「み、美琴、これは?」
「ア、アンタが先にバレンタインチョコなんて渡すから私もお返ししなきゃいけなくなったんでしょっ!? だけど、ホワイトデーには用事が入ってるから、だから、これは、その…先払いなのよ!」
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