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閉まりかけたドアに手をつっこみ、無理やりこじ開ける。
指が圧迫されて痛かったが、そんなの無視した。
いきなりのことで驚いたばあさんは、慌てて振り向き、目を見開いた。
驚きのあまり、腰を抜かしてその場に座り込む。
口がパクパクと何度も開閉を繰り返していて、思わず鼻で笑いたくなった。
「な、なな…な、なに、あんた…」
「同類にすんな」
「へ?」
尻餅をついたままあとずさるばあさんを見下ろして、精一杯にらむ。
ばあさんが、小さく悲鳴を上げた。
「あんたがどうして俺を嫌ってるかなんて知らねえし、知るつもりもねえ。
つーかどうでもいい。
けどな、咲があんたに対して気に食わねえ態度取ったくらいで、俺と同類にすんな。
こう…なんつーのかな、言葉じゃ言い表せねえけど…とにかく、ムカつくんだよ。
そこだけは、わりぃけど見逃せねえ」
言って、目をそらす。
あんな豚面、一秒だって拝みたくない。
「…だから、俺らがもうここに来ない代わりに、二度と咲を傷つけないって、約束してもらいたいんすよね」
横目でばあさんを見ると、彼女は、まるでそれしかできないかのように首を縦に振っていた。
その様子があかべこにそっくりで、俺は、笑いをこらえるのに必死だった。
「それじゃ、お邪魔しました」
小さく頭を下げ、ばあさんに背中を向ける。
「……なるほどなぁ」
地獄耳な自分を呪いたくなった。
「…そんな理由で、俺らは嫌われなきゃなんねえのかよ」
『犯罪者の息子のくせに』
ばあさんは、最後にそうつぶやいていた。
懲りないばあさんだ。
いちいち殴ってたらキリがないっての。
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