二軒目

6/7
前へ
/27ページ
次へ
. 「大丈夫か?」 俺が声をかけると、我慢しきれなくなったのか、咲が俺のマントをつかんで泣き出した。 顔が、涙と鼻水でグチャグチャになっている。 頭に置いた手で咲を撫でながら、ポケットからハンカチを出した。 「お…お兄、ちゃんは…せ、性格…っ悪く…ない、もん…」 「もういいから」 目を拭ってやりながら、俺は呟いた。 咲が、赤い目で俺を見上げる。 「兄ちゃんは気にしてないから、咲も気にするな」 少しだけ微笑んで、バスケットの中のクッキーを咲の前に出す。 「食うか?」 「…うん」 ジャック・オ・ランタンの形をしたクッキーを両手で受け取り、サクサクと音を立てながら頬張る咲。 多分、この中に入ってるクッキーは全部ばあさんの手作りだ。 菓子作りだけは上手いのにな、と思いながら、コウモリの形のクッキーを口に運んだ。 …やっぱり美味い。 ほどよい甘さが、俺の好みだ。 あれで性格よかったら、かなり好かれるばあさんなのに。 口の中でクッキーをモグモグさせながら、バスケットに手を入れる。 …あれ?
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加