二章

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それに上乗せするかのように自分達の家系は名家の武家。いずれ親の決めた家柄の妻、夫をもらうことになる。これはこの時代珍しくない話。 家系の繁栄のためといえど自分の好いた者とは到底、結ばれることのない武家の出の者。 決められたレールを歩き、歩んでいく我が人生。 和喜子は、この年、縁談の話が持ち上がり、この時ばかりは自分の家系を恨んでいた。 我が儘なのかもしれない、そう思いながらも心は信濃に惹かれているのに、家系のために嫁など行きたくなかった。 「国司さんは自分の家系を恨んだことはありませんか??」 「……えっ??」 「いずれ貴方は毛利殿にお遣いになられる身、決められた人生を歩んでいくのは悔しくないのですか」 何故、急にそんなことを和喜子が言いだしたのか信濃は分からなかった。 口調は荒々しいのに見れば、彼女は泣いているように見え、信濃はさっと手拭いを差し出せば。 「悔しくはないですよ、私は決められた人生を歩んでいくつもりなど毛頭ない……それが例え周りの反感を買うことになっても私は私の意志で生きていきたい、その考えは今も昔も変わりません……喩えて言うなら白を見て黒とは言えませんし、それを周りにあわせ見過ごすような人間にはなりたくはない」 《熱く語ってしまってすみません、何があったかわかりませんが、泣きたい時は泣いて下さい……》そう言いながら和喜子に手拭いを握らせた。
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