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和喜子の心はどんどん信濃へと惹かれていく。
今も、止まることを知らず。
優しい信濃の声を聞いた瞬間、ハラリハラリと和喜子の頬に涙が伝い、それを見れば信濃は思わず眉を寄せた。
何故泣いているのか、問い掛けても和喜子は首を横に振りながら。
「すみません……目にゴミが入りまして……お見苦しいところをお見せしてしまい……お許し下さい」
笑みを浮かべながら、そう言葉を発するだけ。
どこかよそよそしく、他人ごとの様に距離感のある言葉に信濃は《そのようなお言葉は止めて下さい……何故、急に》と、言葉を発したが和喜子から返ってきた言葉は。
「父から頼まれていた遣いがありますので……私はこれで……」
それだけだった。
どこかで信濃への想いは歯止めをキかせ、蓋をしなければならない。
そう和喜子は思い、考えだした言葉の意味を信濃がこの時知る筈もなかった。
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