二章

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誰かが脳裏を支配すること、それは初めての経験で剣術の邪念と言われればそうのかもしれない。 信濃はその日、素振りを止めれば直ぐに床についたがこの時自分の人生の中で一つの分岐点が直ぐそばまで迫り来ることなど知るよしもなかった。 「父上、今なんと仰ったんですか……」 晴れた空の下、国司家の居間では信濃の声が響き渡る。 どこか愕然とした信濃と相対し父は平然とした表情が印象的で暫く信濃は父を見つめたまま言葉が出なかった。 信濃の頭の中で一瞬和喜子の姿が浮かんだが。 「見合いだ、分かったな」 父の言葉がそれを無惨にもかき消した。
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