一章
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時は江戸時代後期、幕末。西暦でいえば1842年。 世は身分の低い農民が飢饉の歪みに耐えしのぎ、富を持ち、己の欲望に目が眩む者は敵、味方関係なしに疎まれ、足元を狙われ散っていく者が多い時代――。 江戸幕府がこの年、南京条約を発足し、お世話でも平和とはいえぬ時代に一つの命が此処、長州(山口県)の高洲家に生まれた。 産声をあげたのはやや(男の子)。 それが国司信濃であった。
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