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三月。
おとといまでは、春の気配がそこかしこでしていた陽気だったのに、昨日からまた一気に気温が下がり、今日は雪がちらついている。
……でも俺は、嫌いじゃない。
隣に、のどかが居るから。
のどかは雪に、よく映える。
──白が似合う。
彼女の白い肌は、雪の中に決して溶けない。
きっとそれは、黒く長いまつ毛や薄紅色の唇で、その名の様に、朗らかに笑うから。
「一也と初めて会ったのってさ、大学の学祭だったでしょ?」
と、少し目線を上げ、俺と目を合わす。
よく見ると、その瞳の少し外側を、ソフトレンズのコンタクトが縁取っている。
のどかが眼鏡からコンタクトに替えたのは、その学祭が境目。
眼鏡が壊れたから。
そして、彼女の眼鏡を壊したのは、紛れもなく、俺だった。
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