38人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
「何か昨日ふと思い出して……懐かしくなっちゃった」
目を閉じて、のどかはきっとその日の事を、再び瞼の裏に思い描いているのだろう。
そして最後にこう付け足した。
「衝撃的だったもんね」
笑いながら のどかは、数年前のそれを振り返った。
「私その時、推理小説を夢中で読みながら歩いててさ。そしたらその本の上に、何か白いものが降ってきて」
と、彼女は歩くリズムに合わせて言葉を紡ぐ。
「眼鏡の位置直してよく見たら白い羽根で……。何でって思って上を見上げたら、ニワトリの着ぐるみ着て、窓から乗り出してる一也が居た」
「……そうだったな」
俺の打った相槌は、ほろ苦い口調だった。
若気の至りとしか言い様のない、ほろ苦い思い出。
それに口調が重なった。
最初のコメントを投稿しよう!