プロローグ

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小学校の頃から入退院を繰り返して、 学校には数える程しか行っていない。 それなりに思い出はある。 だって、何かの行事の時には、親を私を気遣い目立つ事をさせる。 運動会の選手宣誓。 移動教室の司会。 何かしらのグループの班長。 そこまでされると、私ってやっぱり"普通と違うんだな"と認識してしまう。 珍しくもない何十回目かのレントゲン。 カーテンを隔てて待つ間に思いがけない事を耳にする。 『肺にかかった影が、この間より大きくなっていますね。 やはり、覚悟が必要でしょう。』 -覚悟? 『梓ちゃんは、あと何年かの命でしょう。』 医師は、そう淡々と呟く。 涙をこらえる母。 いったいどれぐらい前から私に悟られない様にしていたのだろう。 衝撃の事実を知ってしまった13の夏。 私は腰まである自慢の髪を、 短く切った。 私が死ぬまでどれぐらい伸びるのだろう。 きっとこの髪が伸びたら私は… .
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