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どおんどおん、と擬音語で言い換えるならそんな音が響く。
太鼓を打ち鳴らすかの様な━。
左龍はひたすら目貝(聞けばまだ中学生だという)の顔面をぎゅうぎゅうに握った拳で打ちまくっている。
右で左でまた右左と…。
彼は優勢に喜ぶでも無く、敵に憎しみをぶつけるでも無く
無感情に動いている様に見えた。
こ…
恐い。俺はあいつが恐い。
強さ、がでは無く
その読めなさが恐い。
「止めい!勝負は決しておるっ!」
慌てて龍夢が止めに入り、そこで漸く左龍は我に返ったのか殴るのを止めた。
左龍は血で濡れた己の拳と鼻血を出して倒れたまま動かない目貝を二度三度見比べる。
不意に左龍、すと立ち上がり思い出したかの様に
「ふははは」
と笑って見せる。
いや、それはやらなくて良いから。
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