道場破り

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左龍は宙天高く舞い上がったかと思いきやふわりと着地した。 「ん、」 と鳴いた。 「な、に…?」 串中は一瞬戸惑う。 が、また直ぐに掴み掛かり投げる。 左龍は旨く受け身を取りダメージを無効化する。 この試合での勝利条件は一本を取る事では無く、相手を試合続行不能にする事である。 何度も何度も投げるが全てその甲斐は無く、串中の技は無効化されて行く。 投げ疲れた串中が降参すればそれで左龍の勝ちに成り得るのだ。 「こんな事が…くそう女は傷つけられんが、男ならいくらでも再起不能にしてやると言うのに!!」 「お前モテたいだけだろ!」 俺は堪え切れず外野から野次を飛ばしてしまった。 女子に手出し出来ないって点がいかにも思春期。 「くそう、俺の投げが効かない筈は無いんだ!チクショウ!何故だ!」 串中の豪快な投げ技の数々は見る者を圧倒する。 だが裏を返せばそれは単なる力任せだ。 左龍は技のプロ。 怪力でこそ無いが、力の流れを知っている。 彼は流れに身を任せ、流れる如くにダメージを無力にするのだ。 「くっそう!!」 しかし串中、気迫満々。まだまだ疲れを見せず攻め立てる。 連投による連投。 「流石に目が回ってくるよぅ。飽きちゃった」 左龍。 目を細めて己を掴む串中の腕に触れる。 「眠いなぁ。ふん、力の流れを…変えてみる。んんっ、」 それは串中が再度投げに掛かったその時である。 がぎりと嫌に鈍い音が鳴って、 「ぎやあ・あ・あああ・あ…。」と呻いた。
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