終わりの始まり

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眼を輝かせ、所々小さな穴の空いた麻袋を大切そうに抱き少年は走っていた 袋の小さな穴からは酒や食料が顔を覗かせており、息を切らしながらも懸命に走っている姿を見れば親に頼まれたお使いの帰りのようだ しかし、少年が走るこの場所はあまりに異質すぎた 大きく瓦解した家々 街を彩っていたであろう赤煉瓦は灰を被り 街の人々の目を楽しませた噴水は水が黒く淀み 憩いの場所であった広場の木々は腐り枯れ果て 石畳の道にはどす黒い染みと巨大な爪痕を刻まれ 物言わぬ骸がまるで石ころのようにいくつも無造作に転がっていた 死と絶望で溢れ沈黙した街に生と希望に溢れ木霊する少年の足音 あまりにも相反する二つが混ざり合ったこの場所は余りに異質であった 少年は見知った街を走るかのように迷う事もなく足を止める事なく走る 沈黙を守る骸達に見守られながら少年はただ街を走る
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