珍しい…かな?

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“とぷんとぷん”とペットボトルを回す度に音が聞こえた。 まわりは賑やかで、話し声や流行りらしい音楽が鳴り響いていのに、それでもペットボトルの小さな音が…こんなにはっきりと耳に届いてくる。 「もう過去の終わった話のはずなのに…もう忘れていた話のはずなのに…俺の心も体も忘れてなかった。動けなかった…俺は弱いから…」 「成田は弱くない!」 俺が強い口調で言ったので、成田が驚いた顔で俺を見た。 その拍子に“ちゃぷん”とペットボトルの中で跳ねるような小さな音がした。 「成田は強い!何故強いのか今日わかった」 俺は成田から視線を外し、薄暗い星の出始めた空を見上げた。 「成田は痛みを知ってるから…他人の痛みもわかるんだ。だから強い」 「弱いから…今日みたいに逃げることも反撃もできないんじゃねえか」 成田が悲しい声で言った。 「成田がその気になって逃げれば、あんな奴ら追いつけるはずがない。俺がいたからだろ?残された俺に危害が及ばないように…」 「………」 「成田は強い!俺は他には全くないが、おまえのその強さと優しさだけには以前から憧れている」 「褒めすぎ…つうか言ってて恥ずかしくねえのかよ。聞いてる俺が恥ずかしい…」 成田が恥ずかしそうに膝に顔をうずめた。 「それに、もし忘れられないと言うなら、忘れることが出来る日まで俺が気長に付き合ってやる」 「そんな…俺にとっちゃ簡単な話じゃねえし、いつになるかわかんねえぞ」 成田は隣の俺の目を泣きそうな目で見た。
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