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俺が最後まで言わないうちに兄さんが聞き返してきたので、俺が黙って頷くと、兄さんはジッと俺の顔を見てから『わかった』と携帯を出した。
「あ、タケシ?俺…今日…おう、昴が世話になったって……うん…うん……へえぇ……わかった。すぐに行く」
兄さんはタケシさんと何かを話しながら、ニヤリと笑い電話を切った。
「ちょっと出てくる」
そう言ってから部屋へ戻り、鍵を持って出かけて行った。
次の日ーーー
「おはよ。昨日はサンキュ」
いつもの成田が笑って走ってきた。
「おはよう…昨日は眠れたか?」
2人で話しながら歩いていると、前の方でザワザワとみんながざわついているのが見えた。
近くまで行くと…
「亜澄、今まで悪かった。この通りだ!許してくれ」
誰かがいきなり成田に大声で謝った。
「えっ…え゛ぇ…!?ちょ…」
成田が『信じられない』と言いたそうな顔をしている。
正座をしたソイツらは何度も何度も頭をこすりつけ『ゴメンナサイ』と成田に謝った。
「もう…二度と…二度としねえから……ギャアァァァー!!許してくれぇぇ~」
ソイツらは俺の顔を見た途端、悲鳴を上げて逃げてしまった。
「誰?」
「成瀬気づかなかったのか?ま、顔ボッコボコだったからな…昨日のアイツらだ」
成田はぼんやりと走り去った方を見ながら答えた。
「あんな…顔だったか?」
「さあ………もう、どうでもいいわ」
そう言って成田は、すっきりした顔で俺を見てから笑った。
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