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「あら…でも掛け算なんて基本中の基本をおろそかにしてたら話にならないんじゃない」
「そうよねえ」
クラスの女子2人が森さんと林さんに微笑んだ。
「亜澄君はちょっと間違えただけ。それをネチネチとしつこくつつくなんて…そんな心の狭いようなマネ、あなた達ならしないわよねえ?」
「まさか、しないんじゃない?」
4人の女子達は楽しそうに『うふふ…』と笑っている。
こう言う実に学生らしい爽やかな光景は、傍目からも好印象に映っているんだろうな。
俺はこんな風に“一緒に勉強する”と言うような経験がなかったから、最初は面倒だと思ったが、今は少し、面倒な気持ちが薄らいできている。
なのに…
こいつらはいったい何時まで会話を楽しむつもりなんだろうか?
笑顔は崩さず、次第に小さかった声も大きくなってきている。
(うるさい…!)
「お楽しみのところ申し訳ないが、ここは図書室だ。他の生徒もいることだし、迷惑をかけるわけにはいかない。これ以上、話に花を咲かせて楽しむなら…俺は帰る」
俺がそう言うと、前の女子4人は少し青くなって慌てて勉強を始めた。
平野は何を驚いたのかペンを飛ばしてしまい、慌てて拾いに行った。
成田は俺の顔を見て目が合うと
「さすが…女王様の貫禄ですなあ……あ、次の問題はっと」
ごまかすように問題に向き合った。
それから俺達はただ黙々と時間の許す限り、図書室で勉強していた。
色々あったが、それなりに充実した勉強会だったように思われる。
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