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「成瀬、大丈夫か?」
成田は席についた俺を振り返り言った。
「な…何が?」
『ん…』と顎と視線で俺の手元を指した。
「ああ…幸い痛みもなく、腫れてはきていないようだ」
俺は手を広げて見せた。
「アイツの言ったことなんて真に受けるなよ!まったく…急に気安く成瀬に触るなっての。俺も人のこと言えねえけどさ」
(そうか…成田のやつ…気づいて…)
俺が他人に触れられることを嫌がってるから、気を使ってくれているんだな。
「まだ、慣れない部分もあるが、以前ほど…嫌ではなくなった。だが、つい今は、正直戸惑ってしまったがな」
「俺が近くにいて、フォローできる時はしてやるから、あんま難しく考えるなよ」
『ああ』と返事をすると、成田は安心したような顔をしてから、机に置いた教科書を手にとった。
「で、朝から申し訳ねえが、これ意味わかんねえんだわ」
成田は自分の顔の横で教科書を開いて持ち、わからないと言う箇所を指差した。
「これは……」
俺が説明をすると、真剣な表情で一生懸命聞き、理解できたのか頷いていた。
「おまえの今の熱意を、普段の授業で発揮すればいいものを…」
「だあーっ!余計なこと言うなよ…覚えられねえよ」
成田は今さら教科書に線を引いたり、隙間にメモしたり…
「ああ~やっぱり…すぐには無理なのかな~。いや、そんなことないハズだ。俺は意外に本番に強いからな」
「楽観的でいいな」
俺は呆れてため息を吐きながら言った。
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