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「してるって…今だってホラ」
成田は俺の眉間に指をあてグリグリと押して笑った。
「せっかく綺麗な顔してるんだから、もう少し愛想よくしたらいいんじゃねえの…」
「黙れ。そんなことをして俺に何の得があるって言うんだ」
成田の手を払いのけ、ムッとしながら答えた。
「今よりもっとモテる!」
力説するコイツと話していると…疲れる。
「もういい…俺にかまうな」
相手にすればするほど…体力が吸われているようで…
「つれないヤツだなあ。あ、そうだ。コレやるよ」
成田はいくつか飴の入った袋を俺に向けた。
「何?」
「欲しいだけ取れよ」
「いらない」
「喉痛いんじゃねえのか?ちょっと掠れたような声になってるぞ」
確かに朝から少し喉が痛い。
驚いた…
家では誰も気づかなかったのに…
「ほ~ら。何なら食べさせてやろうか?あ~ん」
「バカにするな。ハア…おまえ、しつこいから貰ってやる」
断っても、コイツとは押し問答するだけなので、袋に手を入れた。
「成瀬、何だった?」
成田がニコニコしながら聞いてきた。
「何が?」
何かわからず聞くと、成田が俺の取った飴を指差した。
「『中吉……恋の予感』?くだらない」
呆れる俺もおかまいなしで、成田は羨ましそうに言った。
「へえ~“恋の予感”だって?成瀬いいなあ。俺なんか“大凶…悲しい現実”だったんだぜ。その直後にあのチビ……はぁ…」
「………」
あんなに元気だった成田が、ガックリとうなだれて一気に元気がなくなった。
「なあ、成瀬ぇ…少しは“何かあったのか?”とか“俺が慰めてやるぜ?”とか優しい言葉ないワケ…」
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