きいてほしい…かな?

4/13
前へ
/426ページ
次へ
「フッ……無駄な期待はするな」 「クールだねえ」 成田は笑った。 成田が前を向いたので、無理に貰ってやった飴を食べてみた。 (あ、甘い…青りんご…かな?) 飴なんて随分久しぶりに食べた気がした。 なんだか懐かしい…味… 喉の痛みも引いた放課後ーーー 音楽室に入ると、後ろから声をかけられた。 「昴くん…少しいい?」 振り返ると同じ中学校出身の女子だった。 「何か用?」 「わ…私ね…私…」 彼女は顔を赤らめて下を向いてから、意を決したように俺を見て言った。 「私…昴くんのこと好きなの…私と付き合って欲しいの」 (やめてくれ…俺のことまともに知りもしないくせに…俺はあんたには何の興味もないんだ…) 「悪いけど…」 「どうしてよ!昴君」 「だから、俺はあんたと付き合えないって言ってるだけだ」 「どうして、私のこと嫌いなの?」 (“どうして”“どうして”………何故みんな、俺はいつだってはっきり言ってるのに、同じことばかり言うんだ……いったいこれ以上何が聞きたいんだ………あっ?あれは………) 「別に嫌いじゃない。好きでもない」 (うんざりする…もう早く出てってくれ!) 「私…私ずっと中学の時から好きだったの。本当に昴君のことずっと好きだったの」 (何故、みんな、自分の気持ちを意地でも俺に押し付けよとするんだ……俺の気持ちは、無視するくせに…) 目の前の女子に、恨みも何もないが、いいかげん俺だってイライラしてくる。 「悪いけど、俺はあんたには全く何の興味もない」
/426ページ

最初のコメントを投稿しよう!

548人が本棚に入れています
本棚に追加