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「フッ……無駄な期待はするな」
「クールだねえ」
成田は笑った。
成田が前を向いたので、無理に貰ってやった飴を食べてみた。
(あ、甘い…青りんご…かな?)
飴なんて随分久しぶりに食べた気がした。
なんだか懐かしい…味…
喉の痛みも引いた放課後ーーー
音楽室に入ると、後ろから声をかけられた。
「昴くん…少しいい?」
振り返ると同じ中学校出身の女子だった。
「何か用?」
「わ…私ね…私…」
彼女は顔を赤らめて下を向いてから、意を決したように俺を見て言った。
「私…昴くんのこと好きなの…私と付き合って欲しいの」
(やめてくれ…俺のことまともに知りもしないくせに…俺はあんたには何の興味もないんだ…)
「悪いけど…」
「どうしてよ!昴君」
「だから、俺はあんたと付き合えないって言ってるだけだ」
「どうして、私のこと嫌いなの?」
(“どうして”“どうして”………何故みんな、俺はいつだってはっきり言ってるのに、同じことばかり言うんだ……いったいこれ以上何が聞きたいんだ………あっ?あれは………)
「別に嫌いじゃない。好きでもない」
(うんざりする…もう早く出てってくれ!)
「私…私ずっと中学の時から好きだったの。本当に昴君のことずっと好きだったの」
(何故、みんな、自分の気持ちを意地でも俺に押し付けよとするんだ……俺の気持ちは、無視するくせに…)
目の前の女子に、恨みも何もないが、いいかげん俺だってイライラしてくる。
「悪いけど、俺はあんたには全く何の興味もない」
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