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放課後の一時間を現代文教師による説教で潰した黒子は、とぼとぼと寮への帰路を進んでいた。
「まったく…たかがちょっとぐらいの能力使用であれほど捕まえて置くなんて…」
ブツブツとそう呟いて歩く黒子だが、先生の言い分は能力使用ではなく成績の悪い教科の授業を集中しないとはどういうことだ、ということだった。
「せっかく今日は風紀委員〈ジャッジメント〉の非番でしたのに…お姉さまは先に帰られてしまいましたし…」
そう言って、肩を落とすばかりだった。
「二度あれば三度あるだけに、運の悪いことはまだ続きそうな予感が…」
その時、ポケットのなかの彼女のケータイが震えた。
もしや、お姉さまが私を励ましに!?と、ネガティブな考えの割りにポジティブに判断する黒子は、すかさず手に取った。
『あ、白井さん?ちょっとお話しが…』
いきなり、ガクッと前のめりになる黒子。
『あれ…もしもーし?白井さーん?』
「…二度あれば三度ですのね…」
『…?』
電話をしてきたのは、同じ風紀委員の初春飾利だった。
やっぱり、今日は不運続きでしたわ…と、落胆する黒子だった。気を取り直して、
「なんですの、初春?非番の私に電話するだなんて…」
『それが…』
少し間を開けて、初春は言った。
『第七学区でちょっとした事件が発生して、うちにも要請が回って来たんですが、白井さんにも協力を仰ぎたいなーと』
はあ、と生返事をする黒子。
『事件の発生は、数分前。場所は学舎の園から北におよそ二キロ地点にある公園です』
「学舎の園から、それほど遠くありませんわね…」
そう言って、該当する公園へのルートを検索する。
『被害の内容は、公園で遊んでいた小学生の目が突然見えなくなった、と』
「医療機関の診断は?」
『おそらく、人間の目に非常に危険な光を見たせいだそうです。他の一緒に遊んでいた子供たちは、異常がありませんでした』
「…と言うことは、事件になるほどですから能力使用によるものが原因の可能性が高いと」
ご名答です、とケータイ越しの声。
『太陽光では、その可能性がありませんし、近くに光学研究室があるなんてこともないので、その可能性が一番高いですね。それと、近くの防犯カメラの映像をあさって見ましたが、別に異常がありませんでした』
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