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街路樹の真上や、街灯の真上に移動しては、次の街路樹などの真上に移動する。
高速で移動する際には、目視した目標の座標上に移動する方が早いためだ。
「おそらくあの公園ですわね…」
目に映った公園には、何台かクルマが止まり、白衣を着た連中がいくつか見えた。
空間移動を止めて、地面にすたっと着地した黒子は、薄暗くなりつつあるために深く影を落とした道を公園に向かって歩く。
(なにやら…かなり大がかりな装置がありますわね)
公園を見た第一印象は、それだった。
パラボラアンテナのような機械が取り付けられた作業車両の側には、ディスプレイを操作している白衣姿がいくつか。
黒子は、風紀委員の腕章を取り付けつつ、他の風紀委員を探す。
『白井さん、着きました?』
「ええ…今、他の支部の風紀委員を探しているところなのですが…」
すると、公園のベンチに風紀委員が幾人か集まっているのを見つけた。
「見つけましたわ。お話しをしてくるので、一旦切りますわね」
了解~、と声が聞こえたので、黒子はケータイを切った。
そして、集まりに向かって歩く。
「すみませんが、風紀委員第177支部の白井黒子です。事件について詳しい話が聞きたいのですが…」
すると、集まっていたうちの一人が答えた。
「ああ、要請を受けていらした方ですね。私は第130支部の朝霧萌です。ちょうど事件原因を調べていたところなんです」
朝霧は「こちらの二人は、如月梓と鷹見陽です」と、身長の高い女性と、黒いブレザーを着こんだ男を紹介する。
「よろしくお願いします。…原因の目星はどうでしょうか?」
それには「僕が説明します」と、陽と呼ばれた男が答えた。
「事件の現場は、ちょうど向こうにあるブランコのあたりです。ブランコに乗って遊んでいた子供たちのうちの一人が突然泣き出して、目が見えないのを訴えたそうです」
と言って、ブランコの方を指差す。
ブランコは、三つあって、どれもいたって普通だ。
「さて、それで原因なんですが…」
と言って、少し微妙な顔をした。
「どうやら、光線操作系の能力者という見解だったそうなんですが、少しおかしいんです」
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